子宮筋腫とは子宮の壁 (筋肉)から発生する良性の腫瘍で、女性特有の病気のなかでは最も患者数が多く、35歳以上の女性の20-30%、40歳以上では40-50%の方にみられます。子宮筋腫はどの場所に発生するかによって、「漿膜下筋腫」「筋層内筋腫」「粘膜下筋腫」に分類されます。
子宮筋腫の半数以上は無症状といわれますが、発生場所や大きさによっては、「過多月経」「不正出血・おりもの」「月経困難症・下腹部痛・腰痛」「圧迫症状」「頻尿」「不妊」「性交痛」などの症状が現れることがあります。
子宮筋腫の治療には、「手術療法(筋腫核出術・子宮全摘術)」「子宮動脈塞栓術(UAE)」「薬物療法」「集束超音波療法」などがあります。それぞれの治療法には長所・短所があるので、主治医とよく相談し、自分の症状やライフスタイルに合った治療法を選ぶことが大切です。
子宮動脈塞栓術 (UAE)とは、カテーテルと呼ばれる細い管を使って子宮筋腫を栄養する血管である子宮動脈の血流を塞栓物質と呼ばれる詰め物で止めることにより、子宮筋腫を縮小させ、子宮筋腫による症状を緩和する治療法です。
UAEは1990年代にフランスより初めて報告され、国内でも行われてきましたが、長らく保険診療としては認められていなかったため限られた施設でのみ施行されてきました。2014年に保険適応となったため、保険診療によってUAEが行われるようになりました。UAEは、からだに傷をほとんど残さず治療できる
(足の付け根に2-3mm程度)、手術よりも短い入院期間で治療できる、子宮を残すことができる、などのメリットがある、インターベンショナルラジオロジー治療(画像下治療)の一種です。保険診療となったため、近年国内での治療数は増加しており、当院でも2016年3月より保険診療によるUAEが開始されました。
右(または左)足の付け根の太い動脈(大腿動脈)へ局所麻酔を使用して2-3mmの細い管(カテーテル)を挿入し、造影剤を注入しながらお腹の動脈を撮影します。子宮へ向かう動脈を探すため、造影剤を動脈の中に注入しながら、順次さらに細いカテーテルを進めていきます。目的の部位(筋腫のすぐ近くの動脈:子宮動脈)まで、カテーテルが挿入できたら、そこから筋腫に栄養を運んでいる動脈を塞ぐ塞栓物質を注入します。
子宮動脈は2本あるので、両方の子宮動脈へ塞栓物質を注入し塞栓します。治療時間は1時間半から2時間程度です。治療後はカテーテルを挿入した部位を10-15分程度抑えて血を止め、圧迫包帯を巻いて病室で4-5時間安静となります。
重篤な合併症は稀ですが、過去の8000例以上のUAEの報告からは、疼痛を除く主要な合併症(感染・筋腫分娩など)の頻度は2.9%とされており、2.7%で再入院による治療が必要であったとされています。UAEの合併症により子宮全摘術を施行した症例は0.7%であったとされています。
UAE後には、ほとんどの患者さんが強い下腹部痛を訴えます。治療中から治療12時間以内に最も強い疼痛を生じ、徐々に痛みは改善していきます。当院では、持続的に鎮痛剤を静脈へ注入することができるPCAポンプを用いて疼痛を制御しています。