基礎研究


 分子イメージングとは生体内の遺伝子やタンパク質など様々な分子の挙動を低侵襲的に画像として捉える技術です。本研究室では分子イメージングを利用した癌の早期発見や治療効果判定を目的とした分子イメージング薬剤の開発、評価を行っています。

64Cu、76Brを用いたPETイメージング

 PETは感度、空間分解能、定量性に優れていますが、PET検査に用いるポジトロン放出核種が超短半減期(2~110分)であるため、従来、PET用放射性医薬品は院内で合成する必要があり、使用できる施設が限られていました。
そこで本研究室ではより検査に適した半減期を持つポジトロン放出核種 (77Br, 64Cuなど) を利用した分子イメージングプローブの開発および有用性評価を行っています。

64Cu標識抗体によるPETイメージング

 KRAS変異型やEGFRの発現量が異なる様々なヒト大腸がん細胞を移植したマウスに64Cu標識セツキシマブを投与しPET撮像を行いました。セツキシマブは癌細胞特異的に高発現するEGFRを標的としたモノクローナル抗体で、大腸がんの分子標的治療薬として臨床使用されています。セツキシマブによる治療を実施する前に64Cu標識セツキシマブPET撮像を行うことで、RIの腫瘍集積量からセツキシマブの腫瘍集積性を予測することが可能となると考えられることから、個別化医療への応用が期待されます。


76Br標識PETイメージングプローブの有用性評価

 76Brで標識したMBBGを褐色細胞腫移植マウスに投与した画像です。76Br-MBBGはノルエピネフリントランスポーターを介して腫瘍内に高く集積し、18F-FDGでは描出できなかった小さな腫瘍を可視化することに成功しました。本研究は日本原子力開発機構との共同研究の一環として行っています。


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PETによる癌の早期治療効果判定

 PET検査で汎用される18F-FDGは、癌の位置や大きさの同定、転移巣検出などの診断のみならず、病期診断、治療効果予測、治療効果判定、予後推定の各段階で有効であることが報告されています。また近年、アミノ酸代謝イメージング薬剤が18F-FDGに比べ炎症部位や頭頚部への集積が少ないことから、新たな腫瘍診断用薬剤の1つとして注目されています。これらのことから、本研究室では18F FDGや群馬大学オリジナルな18F標識アミノ酸代謝イメージング薬剤である18F-FAMTを用いたPETによって抗がん剤の治療効果を早期に判定できるかどうか検討を行っています。

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RI標識抗体を用いた治療実験

 近年、治療用のRIを結合した抗体を体内に投与し体内からがんを治療する『放射免疫療法』が非常に注目されており、90Y結合CD20抗体(ゼバリン)は悪性リンパ腫に対する優れた治療薬として臨床の現場で使用されています。本研究室では90Yで標識した様々な抗体を用いた放射免疫療法の、固形がん移植マウスに対する治療効果を検討しています。

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超音波分子イメージング薬剤の開発

 超音波診断は低侵襲的で低コストな診断方法であり、画像収集にかかる時間が短いことに加え、装置の普及率も高いなど他の画像診断に比較して多くの利点を有しています。最近、マイクロバブルを利用することで空間・時間分解能の高い画像の取得が可能となりました。これらのことから、分子標的型マイクロバブルを利用した超音波診断が新たな分子イメージングの手法として注目を集めています。本研究室ではマイクロバブルよりも小さな粒子径を持ち、腫瘍内に到達可能な超音波分子イメージング薬剤の開発を目的として、分子標的型ナノバブルの合成、評価を行っています。

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