腎がんに対する経皮的凍結療法の紹介


腎がんに対する経皮的凍結療法とは?

腎がんに対する経皮的凍結療法とは、CTやMRIなどの画像誘導下に治療針を腎病変へ穿刺し、針先端に−20℃から−40℃の氷塊(アイスボール)を作成することによって組織を凝固壊死させる新たな治療法です。海外では様々な臓器に対して凍結療法が施行されていますが、国内では平成22年に「小径腎がん」に対しての凍結療法が承認されました。当院では2013年に凍結治療器が導入され「腎がんに対する経皮的凍結療法」を保険診療にて行っています。
凍結療法は、手術よりも短い入院期間で治療できる、局所麻酔のみで治療できる、腎機能を手術よりも温存することができる、などのメリットがある、インターベンショナルラジオロジー治療(画像下治療)の一種です。保険診療となったため、近年国内での治療数は増加していますが、関東地方での導入施設は少なく、群馬県内では当院のみに導入されています。

腎がんに対する凍結療法の適応について

治療適応は以下の通りです。

  • 画像診断もしくは病理診断にて腎がんが強く疑われるもしくは診断確定している。
  • 腎がんがTNM分類でT1以下である。
  • 外科的手術 (腎全摘術、腎部分切除術)の適応とならない、または希望しない。

治療の適応とならない場合は以下の通りです。

  • コントロールできない転移病変や他癌病変を有している。
  • 治療を要する感染症を有している。
  • 凝固異常・免疫異常がある
  • 抗凝固薬・抗血小板薬を治療時に一時的に中止することができない。

治療の適応に慎重な判断が必要な場合は以下の通りです。

  • 画像上典型的ではない腎腫瘍で、病理診断が行われていない。
  • 4cmを超える病変
  • 外科的手術の適応と判断されているが、本人が手術を希望していない。
  • 他治療によりコントロールはされているが、転移病変や他癌病変を有している。

治療の方法

凍結療法は、病変部に針(2〜5本)を刺し、針内に高圧アルゴンガスを注入することで針先端に1〜6cm程度のアイスボールと呼ばれる氷を作成し、病変を凝固壊死させる治療法です。CTあるいは超音波画像を見ながら病変部に針を進め、目的の部位に到達したら、アイスボール作成を行います。1回の治療で「5-15分の凍結ののち5分〜10分の解凍」を通常は2回繰り返します。病変の大きさによっては、複数回の穿刺と治療を行う場合や治療前にカテーテルによる動注治療を行う場合があります。治療前後に腫瘍から針生検を行う場合もあります。治療時間は1時間半〜2時間程度です。治療後は病室で3時間程度の安静となります。安静時間終了後は通常すぐに歩行が可能となります。入院期間は治療前検査を含め通常は1週間程度です。

治療効果について

過去の文献的報告による腎がんに対する凍結療法の治療効果は以下の通りです。

  • 腎がんに対する初回局所制御率は、80-95%程度。
  • 治療5年後に再発なく生存している割合は、90%程度。
  • 初回治療後に再発する割合は、3-20%程度。
  • 処置が必要な合併症が発現する割合は、2-10%程度。

当院における腎がんに対する凍結療法の治療成績は以下の通りです。

  • 2013年6月から2017年4月までに計67例に治療施行。
  • 初回治療で完治した方の割合は83%で、2回の治療で完治した方の割合は98%でした。
  • 処置を要する合併症は、4例に認められましたが全例で追加手術などをせずに改善が得られました。この治療による死亡例は経験していません。

合併症について

 この治療はインターベンショナルラジオロジー治療という低侵襲医療のひとつなので、外科的手術と比べて合併症を生じる頻度は少ないと考えられていますが、体に針を刺す治療ですので場合によっては合併症を生じる場合もあります。

生じる可能性のある合併症は、以下の通りです。

  • 穿刺部の出血や血尿
  • 穿刺部や治療部の痛み、治療後の違和感
  • 発熱、体の冷えによる吐き気
  • 腎機能の低下
  • 穿刺部や治療部周囲の凍傷
  • 感染、膿の形成
  • 腎臓以外の臓器の損傷 (肺、腸など)
  • 使用する薬剤(局所麻酔薬、抗生剤)などへのアレルギー反応

受診について

  • まずは、当院泌尿器科もしくは総合病院泌尿器科(腎がんに対する外科的手術を行っている病院)へ受診し、腎がんに対する治療法について担当医とよく相談して下さい。
  • 泌尿器科担当医からの紹介状・画像(造影CT・MRI, 超音波などがあれば)を持参の上、当科外来を受診下さい。
  • 当科(核医学科)の診療日は、毎週月曜日・木曜日の午前です。休診日もありますので、病院ホームページにて確認して下さい。当院泌尿器科の診療日については、病院ホームページや電話にてご確認下さい。

参考文献

  1. 宮崎将也ら さまざまな疾患に対する経皮的凍結療法−当院の経験から− MEDIX vol. 62
  2. Atwell TD et al. J Vasc Interv Radiol. 2012;23(1):48-54
  3. Blute ML Jr et al. BJU 2013;111(4Pt B):181-5

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